デルヴォー の商品レビュー
府中市美術館で開催されていたベルギーのシュルレアリスムの画家ポール・デルヴォーの回顧展『夢にデルヴォー』を観に行った。デルヴォーの画業をわかりやすく辿ることができ、けっこう巨大なキャンバス作品も多くあり、見応えがあった。確かに夢に出てきそう(まだ出てきてないけど) デルヴ...
府中市美術館で開催されていたベルギーのシュルレアリスムの画家ポール・デルヴォーの回顧展『夢にデルヴォー』を観に行った。デルヴォーの画業をわかりやすく辿ることができ、けっこう巨大なキャンバス作品も多くあり、見応えがあった。確かに夢に出てきそう(まだ出てきてないけど) デルヴォーの作品は裸の女性の絵が多い。そのなかにちょくちょくロングコートで眼鏡をかけた長身の紳士が出てくる。デルヴォーが好きだったジュール・ヴェルヌの小説『地底紀行』のリーデンブロックだ。女性だけなら静謐な感じのままなのに、リーデンブロックがいると現実感が出て、なんだかざわざわした感じがでる。こっちのほうが夢に出てきそうだ。 ポール・デルヴォーは今では有名な画家に入ると思うけれど、それでも単体の画集というと数えるほどしかなく、これは比較的手に入りやすいもののひとつ。25年ほど前の本の割には発色がいいので印刷に関してはそれほど不満はない。ただ解説が雑に感じる。 デルヴォーの絵に登場する女性は、みな同じ顔をしている。なぜ?と誰もが思うはず。美術展では、それは妻のタムの顔で、その中に理想の女性像を見たから、と解説していたが、この画集では、そんな素朴な疑問も取り上げていない。 この解説者の名前になんか見覚えがあったから、検索してみてみたら、学生のころ読んだ『1930年代のメキシコ』の著者だった。あれはメキシコの壁画運動の本だったから、少なくとも、シュルレアリスムの専門家ではない。画家の内面を知りたいという人には物足りない解説だ。 とにかく画集程度で満足できる作品ではないので、一度は実物を観た方がいい。 関東では来年早々に埼玉県立近代美術館に巡回するらしい。この美術館は確か常設展でもデルヴォーの作品を数点展示していたはずだから、他の地域で観るよりお得(昔の記憶なので現在もそうかは不明) 夢にデルヴォー。 それにしても、いまだかつてこれほどインパクトがあるキャッチコピーをつけた美術展があっただろうか。展示の内容もさることながら、このキャッチコピーを考えた職員に喝采を送りたい。 このキャッチコピーがはまり過ぎて、現実でも頭を離れない。
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