楽園

佐川恭一(著者)

• 販売会社／発売会社: 書肆侃侃房
• 発売年月日: 2025/07/28
• JAN: 9784863856851

商品レビュー

2025/10/11

家父長制の呪いというものは、結局「なんとなく」墓参りをして「なんとなく」男児を欲する人たちの無意識の問題なのではないか。

愛する人と結婚して子供をもうけて、幸せだったはずなのに、子どもと妻が何よりも愛しいと思ったその次の瞬間に、苛立ちによって瓦解する心の揺れが生々しく描かれていて佐川の文章を通して私も結婚生活を体験した気持ちになってしまった。

2025/09/03

何故気持ちの曇り空は晴れないのか。
外形的には特段の問題はない。
それでも、考えてみれば取るに足らない些細なことに執着し、ささくれる。
束の間の青空の兆候も、思ったとおり指の間からこぼれてしまう。
出口はどこにあるかと彷徨う。

ここのところ、中途半端なエロと学歴コンプの、失礼ながら騒がしい本ばかり物していらっしゃったように感じ、少しがっかりしていたのですが。
久々によい本を読みました。
ありがとうございました。

2025/08/29

ここのところ佐川恭一節を味わってなかったが
これが佐川恭一である。文字びっしり系であるため
そこまでの頁数ではないが読み終えるのに時間がかかった。不服　楽園　パールライトタワー天王寺と三作入った今作。全て面白いのだが個人的にはパールライトタワー天王寺が響いた。氏の独白はもう血の滴るような心の叫びでありどこか戯曲をみるようである。終幕のない終わらない日常は続いていくがどこか臆病者の連帯で乗り越えていく勇気をもらえる。それは本当に小学生の頃の予防接種前、もうすでに打ち終わった子にすれ違い様、痛かった？と聞くことで得られる安心程度にすぎないが、正にそれが
ほんの些細なお守りのようなものだ。やはり偉大な作家である。少なくとも私にとっては。