ルールメイキングの戦略と実務

官澤康平(著者), 南知果(著者), 徐東輝(著者)

• 販売会社／発売会社: 商事法務
• 発売年月日: 2021/03/03
• JAN: 9784785728427

商品レビュー

2024/09/11

近年、革新的な技術やビジネスモデルが次々と登場してくる中で、それらを規制するルールの整備が追い付いていない場面が増えており、また、イノベーションの波に法規制を対応させていくに当たっては民間のイニシアティブが求められているといった現状認識を前提とした、企業によるルールメーキング（法的拘束力の有無を問わず、規範の形成・変更・維持を目指す活動）の入門書。ルールメイキングのビジネス戦略上の意義や方法論を整理し、様々な実例を背景となる法的論点とともに紹介している。
新規事業等に関して既存の法律等のルールがネックとなっているような企業が、そのルールを変えたり、新しいルールを形成したりする「ルールメイキング」に取り組むに当たって、実践的で有益な内容の本である。企業から要望を受け、実際に立法等に携わる立場の行政等の関係者にとっても参考になると思われる。
ルールメイキングにおいて、ステークホルダーの把握・分析、ターゲットの決定、また、アジェンダ設定やストーリーテリングが重要であることなど、様々な実例も通じて、よく理解できた。
ルールメイキングに活用できる制度として紹介されている、グレーゾーン解消制度、規制のサンドボックス制度、ノーアクションレター制度等については、いずれも名前は聞いたことはあったがよく知らなかったので、勉強になった。

2022/06/28

法律の専門家の目線から、ルールメイキングの原則や事例を初学者(民間企業における担当者レベル)向けに記載している。内容の網羅感も十分で、非常にわかりやすい。

第4章の事例紹介では、自分に縁遠かったり関心が薄い分野のルールメイキングの詳細を追うのには苦労するが、各事例から敷衍できる戦略があるように思われるため、難解に思われる場合は各事例の最後だけ読むのでも良いと感じた。

ハードローだけでなくソフトローの重要性や責任ある規制主体としての企業について解説していたり、日本国内だとなかなか難易度の高いとされる、裁判を通じたルールメイキングについても考察していたりと、学術的な関心も満たしてくれるのが更にありがたい。

終章に記載されている「課題としての法」というのは本当に至言だと思う。ルールメイキングというのがある一つの私企業のためだけでなく、社会の構成員全てのための営みであるということを全体を通じて再確認させてくれる本だった。