商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
発売年月日 | 2020/06/22 |
JAN | 9784120053184 |
- 書籍
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アジア経済はどう変わったか
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アジア経済はどう変わったか
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21世紀は本当に「アジアの世紀」となるか。AIIB創設など中国の躍進著しい時代、ADB総裁が見たアジア経済の実相とは
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等身大の姿を、筆者自身の体験と共に、わかりやすく記述されている逸書。特に、財務省勤務時代から、アジア開発銀行総裁になられてからの、具体的な日々の生活についても描写されており、親しみを強く感じる。 ●経済発展の8条件を考える 私が総裁に着任してしばらくした頃、日本語や英語の雑誌や...
等身大の姿を、筆者自身の体験と共に、わかりやすく記述されている逸書。特に、財務省勤務時代から、アジア開発銀行総裁になられてからの、具体的な日々の生活についても描写されており、親しみを強く感じる。 ●経済発展の8条件を考える 私が総裁に着任してしばらくした頃、日本語や英語の雑誌や新聞への投稿を通じて、経済発展の8条件という考えを発表した。 ●インフラへの投資 電力・道路港湾などが整備されていなければ国内産業が発展しないし、外国からの直接投資も来ない。国民生活にも大きな影響があるインフラ投資は、民間の電力会社なども行うので、多少定義が困難だが、GDP に占める公共投資の比率を見ると、中国は、他国に比べて非常に高い。実際中国に行くたびに、ハイウェイや都市インフラが新しく作られているのに驚く。 ●教育や保健など、人的資本への投資だ。多くの国で小学校への入学率は高くなっているが、中等教育・高等教育の質はどうか、職業訓練が産業のニーズと結びついているのか、など課題は多い。 ●第三はマクロ経済の安定だ。インフレ率が二桁であるとか、財政が不安定で金利も高いような環境では、将来を見通すことは困難であり、将来のために貯蓄したり、投資をしたりすることが阻害される。 ●第四は、解放的な貿易・投資体制、民間セクターの促進だ。後で詳しく論じるが、中国やベトナムなど、もともと計画経済であった国のみならず、インドやインドネシアなど多くの国が、反植民地主義・社会主義の影響で、輸入代替政策、価格統制、産業の国有化などを進めた時期があり、成長を大きく妨げた。その後、アジアのほとんどの国が、より市場経済を志向する政策に切り替え、ビジネス環境の改善に努めた。 ●第五は、政府のガバナンス(統治)だ。汚職は社会正義に反するのみならず、人々のエネルギーを非生産的な行動に向け、成長を妨げる。行政の執行能力の高さは、各国のパフォーマンスと密接に結びついている。政府による国有企業の透明性・説明責任の向上も不可欠だ。 ●第六は、社会の平等だ。資産家と庶民の格差があまりにも大きな国では、成長という目標が国民に共有されないし、教育や健康への投資も、貧困層では不十分になり、労働力の質も高くなりにくい。不平等自体が問題である上に、成長を阻害する要因になる。 ●第七は、将来へのビジョン、戦略だ。政府には、自国のどの強みで発展していくべきなのかを見極め、戦略を国民と共有し、それに基づき優先的に財政支出や公共投資を行い、民間セクターにも指針を与えていく責任がある。 第八は、むしろ最初にくるべき条件で、政治や治安の安定、周辺国との良好な関係だ。アジアのこの50年間を振り返ると、ベトナム戦争やカンボジアの内戦、スリランカ内戦などがあり、アフガニスタンは今でも頻発するテロの脅威にさらされているが、全体としては安定を保ってきており、それがアジアの発展の基礎となったと言えるであろう。低所得国から、現在の中国のような中所得国の上の方まで行くことは、やるべきことをやれば到達できると思う。実際に、各国とも努力をしているが、問題は、適切な政策を持続する政治的なリーダーシップと、国民のサポートが確立されているかどうかだ。 ●今世紀がアジアの世紀だと言うのであれば、アジアは、世界における知的な影響力人々を引き付ける魅力ソフトパワーを、もっと高めなければいけない。実際、欧州、そしてそれに続く米国は、ルネッサンスやアジアへの海路の開拓の時代から、多くのものを積み上げてきた。血で血を洗う宗教戦争や、世界各国の植民地支配、奴隷貿易など、ひどいこともしたが、科学技術や軍事力のみならず、資本主義の仕組みや国家間の国際法的な秩序、国内の法的枠組み・民主主義や権力分立の考え方、近代的な医療や教育のシステム、芸術や文芸、それらの基礎となる哲学の領域まで、その蓄積は大きい。 ●欧米が過去5世紀に渡って発揮してきたのと同様の影響力を、アジアが持つようになるには、まだしばらくの時間と努力が必要だろう。アジアは、その制度・ガバナンスをさらに強化し、世界の科学や、技術文化の発展にさらに貢献し、国際的な課題に取り組む上での責任をさらに果たし、自分たちの考え方をさらにしっかりとを世界に伝えていかなければならない。
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