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ロンドン狂瀾(下) 光文社文庫
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ロンドン狂瀾(下) 光文社文庫

中路啓太(著者)

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ロンドン狂瀾(下) 光文社文庫

704

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 光文社
発売年月日 2018/03/09
JAN 9784334776152

ロンドン狂瀾(下)

¥704

商品レビュー

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2021/01/24

良いフィクションというものはジャンルに関係なく、今の人の生き方や世界の在り方を問うものもあるように思うけど、この『ロンドン狂瀾』も今の世界や人の在り方を問うような重厚な物語だったと思います。 上巻でロンドンでの軍縮会議を終え、話は国内へ。条約の内容を受け入れられない、日露戦争の...

良いフィクションというものはジャンルに関係なく、今の人の生き方や世界の在り方を問うものもあるように思うけど、この『ロンドン狂瀾』も今の世界や人の在り方を問うような重厚な物語だったと思います。 上巻でロンドンでの軍縮会議を終え、話は国内へ。条約の内容を受け入れられない、日露戦争の英雄、東郷平八郎をはじめとした海軍関係者、政変を狙う野党、そして大きな影響力を持つ枢密院。 米英との軋轢を避けるとともに、軍縮による財政健全化と不況脱却のための減税を実現したい浜口内閣は、各方面に粘り強い交渉を進めていくが…… 歴史的な記述の詳細さは上巻でも健在。特に天皇の政治的な部分に関しての当時の人々の思考の再現であったり、憲法解釈をめぐる攻防であったり、そこをめぐっての展開が丁寧になされていたと思います。 要所要所で感じられるのは、国益であるとか、国民を置き去りにしていく政治家たちの様子。政権交代をもくろむ野党は、国全体のことを考えず自分たちの権力拡大のために内閣を攻撃し、内閣は内閣で不答弁の戦術を繰り返す。今も昔も政治は何も変わっていない。 そしてメンツやプライドから妥協点を見出せくなっていく、海軍司令部や東郷平八郎。浜口総理大臣に対し、嫌がらせのような質疑を繰り返し、条約批准を防ごうとする枢密院。国益や、日本の国際的な立ち位置などを度外視し、自身の立場からしか物事を考えられない権力者たち。思想が凝り固まった人間たちの厄介さというものを、いやが応にも感じさせられる。 下巻では浜口総理大臣の姿が印象的。自身の命に代えても、国のため、国民のため条約を絶対に批准させるという信念がすさまじかった。それは軍部との対立だけでなく絶対的な力を持った枢密院との対立も辞さない姿勢にも表れていると思います。 小説によると、国内は不景気にあえぎ、上記したように軍部の反対論も根強かったものの、内閣や浜口総理に対する支持率は高かったそう。それもこの信念の強さや、国を想っての行動というものが、伝わったからではないかと思います。 だからこそ物語のラストの展開、そしてその後の日本のたどった道筋を含め皮肉というほかない気がします。1930年の軍縮会議もむなしく、その後満州事変、515事件や226事件で軍部の力は強まり、そして太平洋戦争へ。 こうした日本の流れも、この『ロンドン狂瀾』を読んでいると、すでに予兆はあったのだなと感じます。国民の政治家への失望と、一方で勇ましい軍部への期待。軍縮会議で掲げられていた協調と和平は彼方へ遠ざかり、日本は戦争へとひた走っていく。 最初に『ロンドン狂瀾』も今の世界や人の在り方を問うような重厚な物語と書いたけど、政治不信と救世主への待望は、アメリカのトランプ大統領をはじめ世界中で起こっているし、日本の政治不信ももちろん深刻な状態で、それが今と重なったからこそ、こう書いたのだと思います。 人は歴史から学ぶのか、それとも歴史は繰り返されるのか。 1930年激動の時代を描いたこの『ロンドン狂瀾』は、単に歴史上の出来事を小説に落とし込んだだけでなく、今の時代に対し問いかける物語でもあった気がします。

Posted by ブクログ

2020/09/20

ロンドン海軍軍縮会議をテーマに描いた物語。 下巻は統帥権問題が中心で非常に動きが鈍く、読むのに一苦労した。国防という論点を離れ、自陣の利権・立場を守るための論争となっていく流れは今とそういないと半ば呆れながらも痛感した。その中で浜口雄幸の強い信念は輝いていた。まさに命がけの行動...

ロンドン海軍軍縮会議をテーマに描いた物語。 下巻は統帥権問題が中心で非常に動きが鈍く、読むのに一苦労した。国防という論点を離れ、自陣の利権・立場を守るための論争となっていく流れは今とそういないと半ば呆れながらも痛感した。その中で浜口雄幸の強い信念は輝いていた。まさに命がけの行動であり、その後軍の専横を許す時代の流れを見ると、浜口首相こそが最後の要だったことがよく分かった。 終始情けない全権・財部彪だが、帰国後富士山を見ながら腹を決めるシーンは地味に好きなシーン。(その後も要所で外し続けるのだが…)

Posted by ブクログ

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