アリストテレス 何が人間の行為を説明するのか？ シリーズ・哲学のエッセンス

高橋久一郎(著者)

• 販売会社／発売会社: 日本放送出版協会/
• 発売年月日: 2005/01/21
• JAN: 9784140093122

商品レビュー

2022/01/02

意志の弱さとは何か：
1「意志の弱さ」という「現象」
なぜそうしないの？
問いの背景
アリストテレスのテキスト
2動物の行励のもとになるものは何か　認識—欲求モデルと実践三段論法
動物を動かす部分感覚能力と欲求能力
快楽と苦痛
表象と感情 欲求が物を動かす
不動の善
実践三段論法と行為の必然性
３選択と思案、人問の行為に先立つもの
本意から遊択へ
思案
目的と手段
全体と部分
選択される行為の個別性と思案
4本位か無知か
強制による「行為?」
「無知ゆえの」行為

いかにして善き人となるか：
1「意志の弱さ」という問題の形式的な解決
解決
３つの傍証
2「性向」としての徳と思慮
感性としての性向
ことわりと知
徳と思慮
３非難と責任の根拠
責任
徳と悪徳
善と悪
おわりに　「一つの行為」という物語を作る

2016/05/06

アリストテレス流の「何が人間の行為を説明するのか？」については忠実な記述。

しかし、アリストテレスの概念をそのまま全て使いすぎて、かえって問題を捉えることに失敗している感がある。（表現的にはカッコの使いすぎにそのことが現れている。）つまり、知的に面白くなかった。

法律（特に刑法）を支える哲学とは何か、倫理とは何かという意味では有意義な著作だと思うが。当たり前と言えば当たり前の議論すぎた。

・ギリシアにおける哲学という営みは、アリストテレスの証言によれば、こうした物語としての神話からの「別れ」として始まった。Ｐ８
・「安定」の時期に重要な思索が展開されたことがあったろうか？安定した時期とされる時にあっても、「哲学」とは、常に何らかの「危機」にあって、問題を「根本から」思索する琴ではなかったか？Ｐ１１９

2011/12/22

100頁ちょいの小著だが、意志の弱さとはなにか、という興味深い命題をとりあげてまさしく形式論理的に考察する。人間の行為の特徴とは欲求と認識がひとつになった選択、と定義され、それを性向に高める生き方を説くあたりは発達心理学的でもあり、終章では倫理的な責任論や自由論に至る。しかしそれよりもインプレッシブだったのは、あらゆる目的の最上位にあるのは幸福であり、従って目的についてではなく、目的に向かうものについて思案するという懐のふかい論述である。良い行為がすべての行為の目的である！