近代朝鮮文学日本語作品集(全9巻)

大村益夫(編者), 布袋敏博(編者)

• 内容紹介: 内容:小説 1939年:新しき日 金耕修著. 銀の鱒 李孝石著. 不遇先生 李泰俊著 鄭人澤訳. 光の中に 金史良著. 無明 李光洙著. 秋 兪鎭午著 呉泳鎭訳. 小説 1940年:土城廊 金史良著. 苗木 李箕永著 申建訳. 崔老人傳抄録 朴泰遠著 申建訳. 軍鶏 安懷南著 申建訳. 野ばら 金東里著 申建訳. 農軍 李泰俊著 申建訳. 心相觸れてこそ 李光洙著. 一票の効能 李孝石著 鄭人澤訳
• 販売会社／発売会社: 緑蔭書房/
• 発売年月日: 2001/12/15
• JAN: 9784897740317

商品レビュー

2006/10/16

《創作篇１》『無明』李光洙。40年発表。38年の興士団事件に連座して服役したときの体験をもとにしたとされる獄中記。短編。‘私’は他2名の囚人とともに病監に収監されるが、そこで主に自業自得による汚物的惨事が展開される。3人の囚人のやり取りに絞って書いている。とても汚いけれどユーモアがよくあり囚人の間抜けで悲しいところが良く出ています。この作品は菊池寛が資金を拠出した第一回朝鮮藝術賞をとっている。。
《創作篇２》『夢』李光洙。40年。何やら罪悪感にさいなまれて、男が恐ろしい夢にうなされる。「「罪、罪、貪欲、詐欺、淫乱、貪欲、詐欺、淫乱、離間、中傷、罪、罪、罪。」僕はむつと起き上がった。「そう、そう。恐ろしいわけだ。くさいわけだ。くさいわけだ。」僕はこう獨言を云った。僕は、座り直って観世音菩薩を念じた。」
『鬻庄記』40年。李光洙。作者らしき人の独白。「朝鮮人を生かす道が政治運動にあるのではなくて、道徳的人格的改造運動にあると認識したのは、勿論一段の進歩だと云へないことはないのですが、しかし、僕自身の経験に照らし合はしてみて、結局、信仰を離れた道徳的、人格的改造といふものは、有名無実なものに過ぎないという事を僕は悟っていたのです」『亂啼鳥』40年。李光洙。作者らしき人の独白。関節炎の妻と病気がちな子供たちの話。「帰りに僕は「斜日亂啼鳥」を何回となく口ずさみながらひとり笑った。これはSS師が僕に与へた言葉に違ひなかった。「をれこそ、夕日に啼く鳥だ。」冬の日は金華山に傾いていた。」（斜日亂啼鳥は、秀吉の朝鮮侵略の際に僧を率いて戦った西山大師の読南華経詩の一節）『山寺の人々』静養のため作者がしばらく滞在した興天寺の僧たちを観察して。皮肉っぽいところもあって面白い。《創作篇５》『兵になれる』43年。香山光郎。兵隊になりたがっていた子供が病死した後に朝鮮人対象に徴兵制がしかれ、子供の親が喜ぶ。「来年からは、朝鮮の男の子は皆兵隊になれるんです。内地人だからどうの、朝鮮人だからどうのといふやうなことは、おひおひ跡形もなくなるのでせう。ただ同じく天皇の赤子であるはらから――その感情一つになる日も遠くはありますまい」『大東亜』43年。香山光郎。戦中の日本人と中国人一家の交流。『元述の出征』香山。44年。スキップ。『少女の告白』香山。44年。親に結婚を無理強いされる朝鮮人少女の悲痛な告白。