商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 展望社 |
発売年月日 | 2001/09/20 |
JAN | 9784885460821 |
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品定め
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著名なフランス文学者であり、翻訳家としてもみごとな文体を駆使する稀有な文人作家をつかまえてディレッタンティズムなどという言葉を思い出しては、お叱りを受けそうな気がするが、世界との距離の取り方に、自分を時代の流れの中に位置づけたくない意志が見え隠れするのを見つけると、何やらそういう...
著名なフランス文学者であり、翻訳家としてもみごとな文体を駆使する稀有な文人作家をつかまえてディレッタンティズムなどという言葉を思い出しては、お叱りを受けそうな気がするが、世界との距離の取り方に、自分を時代の流れの中に位置づけたくない意志が見え隠れするのを見つけると、何やらそういう言葉があったな、と思いだしてしまうのだから仕方がない。 『品定め』という標題の付け方自体が反時代的な趣味を表現しているではないか。殊更に和語めいたずいぶん古びた言葉を引っぱり出してくるのも、今の時代の言葉より、その言葉の方が自分にぴったり来るからだろう。仕事なら、時代の要請も無視できないが、半ば自分の趣味に引きずられて書くものなら、自分の世界にあり、手に泥んだものの方が心地よいに決まっている。 植物、蝶、美術品、古典、パリ、音楽と自分にとって気質に密着してはなれがたい物を選んで、思いついたことどもを、ある時は資料を渉猟してつまびらかに蘊蓄を傾けるかと見れば、またあるときはあっさりと軽妙洒脱な書きぶりで遊んでみる。掲載する雑誌やPR誌に合わせて、幾つもの文体を使い分ける様は、本人がカルティエの工房を見てつぶやいた「こういう職人仕事をしたかった」という言葉通り、アルチザンとしての風貌を見せる。 京の町屋として文化財扱いを受けている旧家に育った著者は、日本の文学者に多い野暮ったさと無縁の文人気質を知らず知らずの裡に身につけてしまったらしい。しかし、日常的に美的なものに接して生きるということは、何を見ても「品定め」をしなければ落ち着かない性向を背負い込むということでもあったろう。批評家の眼というものは、対象から離れて絶対的な位置からものを見ることができるという点につきる。そういう意味では、この人の手にかかるものは、その距離がない。「伊万里と付き合う」の中で、当代が、陳列ケースの中から茶碗を出すとき、「さ、チョット外気に当たって息継ぎして下さい。窮屈な思いをさせて相済みませんでした。」と言っているように思ったというような、対象に感情移入してしまう語り口に批評家でなく素人愛好家の顔が透けて見える。 そんな中で「司馬遼太郎一周忌に」という文章には、正当な批評がある。司馬の「形を把握する上で、感性と知性によるやり方があるという。さらにそこから本質を引き出すというのだが、私どもは、日常茶飯、無数にそのことをやっているのである」というギリシア哲学と日本文化とを比べた乱暴な議論に対する批判である。「この国のかたち」を考えるためには、死後愈高まる司馬人気に水を差しても、言わねばならぬことを言うというあたりに、著者の中にある反時代的な教養人としての自負が潜んでいるのを感じる。
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