童貞物語 集英社文庫

佐藤正午(著者)

• 販売会社／発売会社: 集英社
• 発売年月日: 1990/05/18
• JAN: 9784087495782

商品レビュー

2024/11/11

題材
・社会に出て行く前の高校生

テーマ
・僕たちはどう生きるのか

誰が何をする話なのか
・野呂光が、高校三年生の日々を回顧する話

最も伝えたかったこと
・あの頃の、俺たち&私たちの青春

何が新しいのか
・クールな主人公と眩しい青春の対比

キャッチコピーは何か

『グランドの汗の辛さと初恋の涙の苦さ』
もう二度と還らないあの日々へのレクイエム

その他（心に残ったことなど）
・佐藤正午の作品を処女作から順に読み進めていて、この作品が一番、面白いと感じた。この先、もっと面白い作品に出会いたい。

2017/08/25

現在30才の自分。31才野呂光の回顧録を読み、分かったような分からないような、どっちつかずな気持ちにもなっている。野呂光の生きた青春の時代が、自分のそれと全く異なっていることだけが理由ではないはず。凪のような人柄が、自分の激情的（と自分では思っている）な性格と相反し、様々な面で理解に苦しむ。ただ、そこに描かれている青春の日々は、どこかに確かにありそうな、普遍的かつ汎用的、そして何より懐古的である。うまく書いたなー。

2007/01/10

何かに熱中する「爽やかな」青春小説も良いし、自我の目覚めから来る世間と対立する「反抗的な」青春小説もあります。でも、この物語は「等身大の」青春小説です。
受験に専念すべきと主張する教師に対する反発も、心の底ではその必要を現実的に認め、同学年の怪物・江川投手と対戦したいと言う希望も、弱小野球部では無理とどこかであきらめ、何をしたら良いのか判らないまま世間に反抗しても、それはむしろ逃避でしかなく、友情など振りかざすことなく、熱くも無く。。。
こう書くとなんだか情けない物語のようですがそんなことはありません。私の経験とは重ならないのですが、それでも「こんなだったよな」と納得できる、ノスタルジックで微苦笑を誘われる話です。
ちょっと不思議な教師・正太郎も生きてますし、主人公の一目惚れのシーンなども秀逸でした。
せっかく良い話なのに、タイトルで損をしている感じがします。もっともっと読まれても良い本だと思います。