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ニュークリア・エイジ(上巻)
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 文藝春秋 |
発売年月日 | 1989/10/25 |
JAN | 9784163113104 |
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ニュークリア・エイジ(上巻)
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商品レビュー
4.5
2件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
主人公ウィリアムの少年~青年時代までの過去の回想場面と、49歳になった現在の場面が交互に描かれる作品。 タイトルにあるように、ニュークリア=核(兵器)の存在が全編にわたり主人公の精神に影響を与え続ける。 主人公の過去から現在にいたるまで、主人公に影響を与える3人の女性たち(妻のボビ、娘のメリンダ、大学時代の恋人であるサラ・ストラウチ)と、家族、とりわけ父、そして現代のウィリアムが掘り続ける「穴」(とそれに付随してベトナム戦争)が、大きな要素になっている。 小学校時代からの同級生であるサラとは、大学時代に結ばれることにはなる。だが、サラには強烈に惹かれはするものの、そこに愛はない、と述べられている。愛はなくても激しく惹かれる、という点が印象に残る。リオに行き、子どもをもうけることを夢見るサラだが、ウィリアムは現実としてとらえられない。目の前の女性に強烈に惹かれ、しがみつきながらも、ずっと先の将来まで一緒にいることをイメージできない女性との関係を簡潔に、しかももらさずに言い表しているよい表現だと思う。 ボビとの出会いや、彼女を求める点にもそれに似たことがあるのではないか。結局妻は最終的には別居を申し出る。奔放なボビにも問題はあるだろうが、自分にはない異彩を放つものに強烈に惹かれ、激情的に動いてしまうという点を見ると、ウィリアムは女性関係で共通した傾向があるように思われる。 メリンダについては、登場する女性として一番良好な関係を築けているように思える。部屋に閉じ込めてしまうなどある種ゆがんだ愛情の形だと思わなくもないが、それでもメリンダはウィリアムを信頼しているし、ウィリアムからの娘への愛を感じる。 ベトナム戦争がらみの流血の描写が散見される中で、自らの血を分けた存在であるメリンダはやはり特別な存在として描かれているように読める。ウィリアムとメリンダの会話は、作品の中でも軽みというか、軽快なタッチで描かれていることが印象的だ。 父との関係は、描き方としてはやや比重の軽いものになっているようだが、父の死の場面の描写では落涙を禁じえなかった。 死に値するものなど、この世にはない。彼はテロ組織の兵士となるための訓練のさなかにそれを身をもって痛感するのだが、その言い回しが父の死の場面でも繰り返される。父が毎年、町のお祭りの際に演じる人物も必ず死を迎えるので、そのことも重なる。 徴兵逃れのために家族との交流も絶たれたウィリアムの悲痛が巧みに表現されているように思う。 「穴」については、彼の内面を映すもう一つの人格ともとれるし、彼の狂気の産物ともとれる。彼が穴を掘り続ける理由も、シェルターとしての役割だけでなく、自らのもとを去ろうとするボビをつなぎとめるための手段としてもとれる。ここから垣間見えるのは、ウィリアムが常に外的なものに振り回され続けているということだ。ベトナム戦争なり、放射性物質なり、サラなり、ボビなり…。そしてそこに、ウィリアム自身の強迫性や狂気も相まって、彼の行動、ひいては人生が規定されていく。「穴」の声は、強烈な外部との軋轢から生じた彼の一種の逃げ場所、想いのはけ口として彼の内側から生じたものなのだとも考えられる。 ただ、これはウィリアムだけがもつ際立った特質なのだろうか。 多かれ少なかれ、誰しもが外的要因に影響を受け続けていく。 奔放に見えるサラでさえも、追い求められることを求める。次々と相手を変えて自分の位置を定めないボビも同様だ。 私はウィリアムの行動に狂気や妄執を見て、読み進めるのに辟易するような場面もあったが、その行動の中に情状酌量の余地を与えたくなる。 訳者によるあとがきには、この小説が多くの人の心をつかむ理由が簡潔に述べられているが、その理由の一つは彼の中に自分を見るからかもしれない、と思った。
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村上春樹が訳すと必ず文体が春樹色になるのはいつものことですが、それ以外にも春樹作品との既視感。穴を掘る、というメタファーが春樹作品における井戸に思えてならない。とりあえずクッソ面白いですキンキン伝わって来る狂気が最高。主人公はホールデンくんみたいに、傲慢で、孤独で、絶望して、イカ...
村上春樹が訳すと必ず文体が春樹色になるのはいつものことですが、それ以外にも春樹作品との既視感。穴を掘る、というメタファーが春樹作品における井戸に思えてならない。とりあえずクッソ面白いですキンキン伝わって来る狂気が最高。主人公はホールデンくんみたいに、傲慢で、孤独で、絶望して、イカレてて、だからこそ誰よりも正常なの。大好きです。
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